何がどうだとか、そういうことは全く分からない。
気付けば私は大きな屋敷の前にいた。
夜明けの奇蹟
肌にひんやりとした空気を感じて目が覚めた。
いつも寝坊してばかりの自分がこんな早起きをするなんて珍しいこともあるもんだ…。
といっても布団から出るなんて面倒くさいしこのままゴロゴロしてたからいつもと一緒か。
夏も終わって秋が深まると同時に、夜が短くなり朝が長くなってきた。
それに従い俺の睡眠時間も徐々に増していった。
夏は暑苦しくてすぐに起きようと思うけど冬になれば布団やこたつでゴロゴロするのが日課となる。この幸せは誰にも妨害させない。妨害する奴は叩ききってやりまさァ。
寝返りをうった。
数時間たったような気分だけどもしかしたら数十分だったかもしれない。アイマスクを外せば時計を見ることができるがなんとなくやめておいた。グーとお腹が鳴る。俺の感だとそろそろ朝飯の時間だ。
「あの…。」
ほら来た。きっと朝ご飯できましたよという女中さんの声でィ。生憎そんなんで起きようとは思わねーけど。
「すいません…。」
そういえば、今日はいつものおばちゃんの声じゃないな。若い感じの声…新入りか?
新入りのくせして俺を起こしに来るなんていい度胸してらァ…絶対起きるもんか。
「…ここ、どこですか?」
…………は?
何言ってやがんでィこいつ。
「屯所だろィ。何言ってやがんでィ。」
不審に思いながらも寝たまま言う。やっぱり新入りか。変なやつが入ったなァ。
「と…とんしょ?」
そいつの声は戸惑っていた。イマイチ話の噛み合わない、一体何なんでィ。仕方がなくゆっくり体を起こし、アイマスクをとって声の主を見ると。
俺と同じくらいの歳だろう、というような少女が立っていた。
屯所で見たことのない顔。最近新入りの紹介あったっけ?まァあってもいつも寝てるからしらねェけど。
「…。」
「……。」
「………。」
「…お、おはようございます?」
なぜが疑問形、だけど彼女は少し微笑んでそう言った。
その笑みのせいなのかよく分からないけど警戒心が薄れた。そんな自分に少しびっくりした。
「あんた誰でィ?ここで何してるんでさァ。」
「…わ、私が聞きたいです。」
…意味わかんねェ。そして不審すぎる。こいつ、本当に女中か?
しかもこの女、結局おれの睡眠妨げたし。
どうしてやろうか…。女将さん(女中で1番偉い人)に愚痴って1ヶ月トイレ掃除の罰とか…?そんなどうでもいいことを考えていた時だった。
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどどど…
「総悟ぉぉぉぉぉぉぉぉおお!!!!!」
殺したくなるほどウザったい叫び声が聞こえたかと思ったらスパンっときれいな音をたてて襖が開く。ある意味で神業でィ。
「いつまで寝てんだ!!いい加減起きやが……」
土方さんは怒り狂った顔で叫んだかと思うとだんだんと顔が蒼白になっていった。
目線の先には女中の女。
「…どうしたんですかィ?土方さん。」
そう俺が言っても無視。しばらくして口がわなわな震えたかと思ったら尻もちをついてガタガタ震えている。
そしてその震えた指で少女を指した。
「お、おい総悟。そいつは…なんだ?」
「さァ?新しい女中じゃないんですかィ?」
「んなわけあるかっ!!そいつ…体透けてんぞ??」
は、何言ってんでィ土方さん。等々イカレちまったか年じゃないですかィ?俺が副長になる日もそう遠くはなさそうだ。
そう思いながら隣の少女を見ると。
確かに、微妙ではあるが体が透けていた。
試しに手を伸ばしてみた。しかしその体には触れることができず、行き場のない手は空を切った。
「……おぉ、本当だ。私透けてる。」
しかも本人も気づいていなかった。
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そんなこんなで始まりました沖田連載。
これからどうなる事やら。
シナリオは最初と途中からしか決まってないからそこに行きつくまでが大変そうです;
がむしゃらに頑張ります。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
2008.12.15
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