気がついたら大きなお屋敷の前にいて。
何かに引き付けられるように、ためらいなく私は歩いていく。 そして気がつけばある部屋の中にいた。今思えば襖を開けた覚えがないから多分すり抜けたんだろうな。
その部屋には綺麗な髪の青年が寝ていた。

この人は誰、ここは何処…?
そんな訳で寝ているところ申し訳ないと思いながらも青年に話しかけてみた。
全てはそこから始まった。







始まりを告げる声







「名前は?」
「たぶん、です。」
「…職業は?」
「知りません。」
「……年は?」
「さっぱりです。」

「…ていうか土方さん。そんな離れたところから質問するなんて失礼にもほどがあると思いまさァ。」


今私がいるのはすごく大きな部屋。たぶんこの建物の中心部だと思う。そして周りにはたくさんの人。
といってもみんな遠くに離れて座っている。5mは完璧に離れてる。
そしてさらに5m先に質問してくる黒服黒髪の男性がいる。
第一印象:目つき悪い。第二印象:やっぱり目つき悪い。
そんな人がマイクを使って私に質問していた。
ものすごく傷つくんですけど。
そんな中、唯一一人だけずっと私のとなりに座っていてくれる青年がいる。
私が、最初に話しかけた人だ。
この人のおかげで私は今何とか平常心でいられていると思う。
自分が幽霊なんて信じられないし本当なら発狂してしまいそうなのに。
この人が一緒ならば大丈夫、という気がするのだ。
よく分かんないけど大大感謝だ。



「俺にとっちゃお前の方が不思議だ。何でそんな近くにいられるんだ!!!幽霊だぞ!!」
マイクがキーンとなって耳が痛い。ちょっとそれで叫ばないでくださいよ!
というかやっぱり。
「私…幽霊なんですかね……。」
ずーん、そういう効果音が最も適してる。
だって自分が死んでいるなんて、そんな現実信じろという方が無理だ。
「あ…否、その……。」
さっきから私のこと怖がってるくせに、さすがに言いすぎたと思ったのか今度はオロオロしはじめた。
「土方最低死んで詫びろ。」
「お前は黙ってろ。」





「…つまり。っていう名前以外全然覚えてないんですかィ?」
しばらく目つき悪い人VS青年が口げんかしていたがそれが終わってしばらくした後、思い出したように聞かれた(酷い…)
「うん…頭に『』浮かんだだけだから本当の名前かは分かんないけど。」
「じゃあきっとそれが名前でィ。」
そ、そんなあっさりと。でも彼が言うとそうなのかな、って思えるからすごい。
まだ会って少ししかたってないのに。
「どこでどう死んだとかも覚えてないのか?」
「うん…。」
なんだかしんみりした空気。もしかしなくても、私迷惑だよね。
いきなり現れて皆を困らせて。
ここは早く出ていくべきなのかもしれない。
「あ、あのー…私これで」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉおおおお!!」
あ、遮られた。
遮った人は今まで座って聞いていたらしい人。顔は…なんだかゴリラみたいだ。
さらにものすごい勢いで涙を流していてチョットじゃなくてかなり怖い…。
ぎょっとして少し後ろに下がるけどその人はどしどしとこちらにやってきた。
否、アップはさらに怖いんですけど…。
ちゃん…辛かっただろう!!きっとこの屯所に来たのも何かの縁だ!!!気の済むまでここにいてくれ!!」
思いもよらない言葉に一同唖然とした。もちろん、私も。
え、よく話が読めないんだけど…。
「な、ちょっ!近藤さん!!!何いきなり言ってんだよ!!」
うん、私もそう思います。
「だってトシ!この子総悟と同じくらいの歳だろう?なのに死んで、何も覚えてなくて。自分が死んだことも受け止められるはずないのにみんなには怖がられて!!可哀想にもほどがあるだろう!!!」
な、なんだかとても感動した。ありがとうゴリラ(仮)さん。
でもどうやら彼は私を悲劇のヒロインだと勘違いをしているらしい。
「あの、別に大丈夫ですよ?だから」
どんなにあの人が泣き叫んだって本心ではみんな出ていってほしいと思っているに違いない。というか迷惑だし。
そう思って必死にフォローしたのに。
「そんなか弱い女の子をお前は放り投げるのか!トシィィィィィイイイイ!!!!!!」
ビシリと人差し指をさして決めポーズ☆で本人はかっこいいつもりなんだろうけど顔が涙でぐちゃぐちゃでゾンビみたいだ。
そして私の必死のフォローは完全に流されていて隣にいた青年にしか聞こえていなかった。
青年は声を殺して笑っている…なんだか私ただの恥ずかしい人じゃないか。
「……わかったよ近藤さん。」
目つきの悪い人が観念したように両手を挙げた。そして私を見た。
「お前、ここに住んでいいから。」
「「「「マジすか副長!?」」」」
周りの人たちがどよめく。あ、これは歓喜の声なんかじゃなくて恐怖の声ですよ。
「……い、いいですよ。みんな怖がってますし。」
今だって。言ってる本人は相変わらず遠くにいるし、みんな嫌がってるし。





「いいじゃねェですかィ。」
「え…?」
そう言ってくれたのは青年。
「そのうちみんな慣れまさァ。そんなに気にすることでもねーよ。」
うわわ、なんだかジーンときたぞ。
「だから土方さん呪うの、手伝って下せェ。」
あれ、私今だれに感動したんだっけ?もしかしてこの人ずっとそれが目的だったの?
「よぉぉぉおし総悟!!刀抜け―――!!!!!!!」
「はぁ、これだから土方さんはいけねェや。」
そうして格闘する二人と、巻き込まれる周りの人。
私はそれをポカンと見守ることしかできなかった。










「っと、!」
「え、なんですか?」
「俺は沖田でさァ。沖田総悟。」
乱闘騒ぎが終わってなんだかよく分からないけど結局私はここに住み着くことになって。そんなとき青年…沖田さんにそう言われた。
「おぉ!そういえばまだ自己紹介してなかったな!!俺は局長の近藤だ!よろしくな、ちゃん。」
「きょ、局長…?」
つまり、この人が一番偉い人…人は見かけによらないとはこのことか。
「…副長の土方だ。」
「ふ、復調?」
「オィ、漢字変換違うんだけど。」



「まァとりあえず。よろしくってことでさァ。」
「うん、えっと。…よろしく、お願いします。」












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土方さんが無駄に出しゃばってます。
頑張れ沖田!!

そしてみんなの口調があやふやです。
会話がやけに多いのにね。少しずつ慣れていきたいです。
というかみんな勝手にしゃべってくれちゃって大変だ…。
誰が話してるのかちゃんと伝わってるといいですが(…)

ではここまで読んで下さり、ありがとうございました。

2008.12.15