「山崎、どうだ?」
「…はい、江戸にある病院すべて調べたんですけど最近死亡した人に『』という名前の人はいないそうです。」
「…そうか。」
「あの、これってつまり…?」
「あいつは江戸に住んでいなかった、またはずっと昔に死んだ奴ってことになるな。」
「……。」







例の霊の女の日常







このお屋敷――屯所って言うらしいけど、そこに住み着いて(…もしかしてとりついて?)から1週間がたった。
ここの人たちは真選組といって所謂江戸の平和を守る警察らしい。でも沖田さんが言うにはあんまり評判は良くないとか。
警察…つまり公務員。道理でこんなに大きなお屋敷なわけだ。



そして一週間もたてばここにいる人たちのことも分かってきた。
「おぉ、ちゃん!おはよう!!」
「あ、近藤さん。おはようございます。」
まず局長の近藤さんは顔に似合わずすごく優しくて人思いの人だ。
最初はちょっとビビってたけど今ではお父さんみたいに思ってる。
「今日はどこに行かれるんですか?」
「そうだなー。今日は仕事も少ないしお妙さんの護衛をしながら考えるとするかっ!!あ、トシや総悟には内緒だぞ!!」
ウィンクをしながらそう言う近藤さん。それはストーカーだと気付いているのだろうか。あと、たぶん土方さんや沖田さんには言わなくてもばれていると思います。
よく体中ぼろぼろで泣きながら帰ってくるからどうしたのか聞いてみたら惚れている女の人に振られたらしい。しかも毎回あきらめずにアタックし続けているとか。
うん…近藤さんはいい人です。だけど、しつこいのは嫌われると思いますよ…。
そんな私の思いをよそに近藤さんは意気揚々と去って行った。





「おい。」
「はいなんですか?土方さん。」
この人は土方さん。
目つきが悪くて最初は怖かったけど今は少しだけ、ほんの少しだけ和らいだかな・・・?
「総悟知らねェか?」
「さぁ…?私が部屋に行ったときはもう居ませんでしたけど。」
土方さんは副長、だけど本音を言えば近藤さんよりもしっかりしていると思う。
だからこそ真選組は成り立っているのかもしれないけど。
「ちっ、あいつまたサボりやがったな…。」
イライラと煙草に火を付けている。
私、このときだけは霊体でよかったと思う…。たばこの煙は臭くて嫌いなんだよね。
「おい、。総悟見つけたら連れて来い。」
「んな無茶な。私触れないんですけど…。」
いいから意地でも連れて来い。
「(理不尽だ…)ど、努力はします。」
そう言って私は逃げるようにそこを去った。
最初来たときは土方さん、すごく私を怖がっていたけど今では慣れたみたいであまり怖がらなくなった。
逆に私の方が怖い。睨まれたり睨まれたり睨まれたりするから。(土方さん曰くただ見ているだけらしいけど)





「沖田さん、沖田さんっと。」
屯所の中をふらふらしてみたけどそれらしき人はいない。
沖田さんは最初会ったときから変わらない。
なんだかひょろ〜としていてつかめない感じ。
たまに優しいと思ったらふざけてて。しかもドSだということも判明した。
例えば…
「お、!ちょうどいいところに!!」
噂をすれば沖田さんがこちらにやってきた。
「あ、沖田さん。土方さんが探してましたよ。」
「今から行きまさァ。それよりに頼みがあるんでさァ。」
例えば、丁度今みたいなニヤリとした笑顔のときは絶対変なことを考えている時だ。










例の霊の女、が真選組に来てから1週間。
本人には言っていないがいろいろ調べてみた。
真選組に化けて出たんだ。何かつながりがあるに違いない。
そう思っていろいろ調べた結果今のところ全く収穫がなかった。いつもならすぐに情報を手に入れる山崎も今回はお手上げだという。
まだ1週間だ。これから何か出てくることに期待するしかないのだが。

別に攘夷志士だとは思わない、あいつには殺気もないし何より人殺しの顔ではないから。そう己の第6感が告げているので素直にそれを受け入れた。 今までもこの感覚には何度も救われているのだ、信じないより他はない。
1週間。短いようで長い期間。その間に不本意だが俺はあいつを霊と認めなくなってきた。
霊…ではなくて生きている人間として接している。そしてさっきみたいに本人の言動によってそうだこいつは死んでるんだったと気付かされることが多々ある。
そばにいるのに平気だったり。話し終わって離れた後でいつもはっとするから何だか悔しい気分だ。
それには何故か近藤さんや他の隊士たちにも好かれている。
特に総悟はふと見ればと一緒にいる。
あいつは人を引き付ける何かを持っているのかもしれない…。
そう思ったところで噂をすればなのか、外から総悟との話し声が聞こえてきた。


「へェ、じゃあ他の霊も見えるんですかィ?」
「…はい、見えますよ……。たまに人にとりついているのとかもいます、ね…。」
「例えば?」
「……。た、例えば、土方さんの背中に血塗れの女のひ」
「ぴぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁあああああああ!!!!!!!」
俺は襖を開けて絶叫しながら外へ走り出した。








「…成功ですぜ、。」
いやちょっと待ってください。ニヤリとした顔で親指立てないでください。
「な、何が成功なんですか!!こんなもの読ませて!」
私は沖田さんが持っている紙を読んだだけだ。なのにこれじゃまるで共犯じゃないかっ!!
「それに私他の霊なんて見えませんよ!!」
「あ、やっぱ見えないんですかィ?残念でさァ。」
「残念なのは沖田さんの頭です。」
「何ででィ。最近土方さんがに慣れてきたからつまんねェだろうと思って人が折角考えてやったのに。感謝しろィ。」
それは無理な相談だと思います。
「そ、総悟……………お前っ!!!!!」
気がつくと私たちの後ろには土方さんがいた。あ、頭にごみがついてますよ!いったい何処に行ってたんですかっ?!
「土方さん、盗み聞きとは趣味が悪ィですぜ。」
「お前の方が悪いだろっ!!!!」
失礼ですねェと無表情で言う沖田さんの胸座をつかむ土方さん。
「いやいや土方さん。落ち着いて下せェ。最初に言い出したのはでさァ。」
「は……?」
え、何言ってるんですか沖田さん。それ完璧な裏切り…。
―――!!!!!!」
しかし時既に遅し。私の目の前には瞳孔が開ききった土方さんがいた。
や、やばい…すごく怖い…。
「あー…私確かに霊は見えないですけどそれっぽいのは見えますよ。こうぼやぁ〜とした感じの…」
危険を察知したのか私の口が思いもよらないことを口にする。…さすがの土方さんも無理
「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ!!!!!!」
…じゃなかった。
土方さんは絶叫しながら再び走って行った。





「た、助かった…。」
「な、ナイスですぜ、。」
沖田さんはおなかを抱えて大爆笑をしていた。
「もう!沖田さんのせいですからねっ!!!」
すたすた歩き出す私の後ろを腹痛ェと言いながらついてくる沖田さん。全くこの人は!!
「そうそう、お前何時まで『沖田さん』って呼ぶつもりでィ?」
「え、だって沖田さんは隊長さんだから。」
「関係ねェやィ。年も同じくらいだろぃ。名前で呼べ名前で。」
…まあ本人がそう言うなら。
「知ってる?私がさっき土方さんに言ったこと、本当なんだよ。…総悟。」
ついでに敬語もやめてみた。



「…マジですかィ?」



「うん(にっこり)」



といっても本当にほんの少しだけだけど。
とても人型とは思えない、見ようとしなければ見れないほど不安定な存在。
私もあの中の一つなのだろうか。




(なんだか、嫌だな)

隣にいる総悟に気付かれないようグッと唇を噛んだ。
血が出ることはもうない。














+++++++++++++++++
主人公は沖田さんと仲良しです。

日常とかほのぼのしているの好きです。
最後はちょっとシリアスかもですが。
でもほのぼのにするとネタがないから大変…。
しばらくこんなまったりでやっていく予定です。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

2008.12.24