「あれ、もしかしてちゃん?」 「銀さん、ご飯で来たよ?」 「おー…」 もう少し粘ると思っていたけど意外と早く起き上がった銀さんに少し驚いた。もしかして起きてたのかな?一瞬そう思ったけど確かめる術なんてないし何も言うことなく私は銀さんの隣に腰をおろしてチャーハンを差し出した。 「おー、うまそうじゃん。」 「今日は新八君が炒めたんだよ。」 「うわ―…見た目だけかよ。」 「あんたどんだけ失礼なんですかどんだけ僕信用ないんですか」 「だって新八アル眼鏡アル。」 「全くもって関係ねぇよ!!!!!」 「ほら冷めちゃうからさ。食べよー!」 スプーンで適度にご飯を掬い、口に含んだ。 「うん!美味しいよ。」 「本当ですか!」 「まぁの作ったやつの方がおいしいけどな。」 「図に乗んなヨ眼鏡が」 「そんなに嫌なら食べなきゃいいじゃん!!!!」 ギャーやめるネ新八!俺のはやらねーぞ!!!そんな大騒動にもいつの間にか慣れてしまって私は一人にこにこしながらチャーハンを口に運んだ。 騒がしいけどこれが私たちの日常。そんな日常が私は大好きだった。 「そういえばさん誰と話し込んでたんですか?」 大騒動も一段落して新八君が思い出したように尋ねてきた。 「へ?何が?」 「ほら、話し込んでて帰ってくるの遅くなったって言ってたじゃないですか。」 「あれか、男かコノヤロー。浮気ですか泣いていいですか。」 「何勝手に話進めてるの。えっとね。山中さんって覚えてる?」 「山中ぁ?誰だそれ?」 「前用心棒依頼してきた人だよ。大きなお屋敷に猫がいっぱいいてー」 「あぁ、あの猫屋敷の……って男じゃねェかぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」 「ちょ、うるさいよ。耳元で叫ばないで。」 「!!変なことされたアルか?!尻とか胸とか触れてないアルか?!」 がくがくと揺すってくる神楽ちゃん。え、山中さんそんな悪い人じゃないよね?見た目はちょっとあれだけど…。 「とにかく!その山中さんがお礼にってくれたんだけど…」 席を立ちさっき冷蔵庫に入れたものを取り出した。うん、大分冷えてる。 「今から食べよっか。」 瑞々しく輝いた藍色の粒たち。 「ブドウアル!!!」 嬉しそうに神楽ちゃんは叫ぶと一房掴んでそのまま口へ… 「えぇぇぇ!一気?!」 種なしブドウだけど、だけれども!!!決して小さいとは言えないのに。 「これが本場の食べ方ってもんアル!!!」 「ブドウの本場ってどこだよ…。」 銀さんが密かに突っ込むけど神楽ちゃんには聞こえてないみたい。もう一房パクリと飲み込む彼女を見て慌てて自分のブドウをキープした。 せっかく貰ったんだし全部食べられるのも悔しいもん。 「、種なしブドウってどうやってつくるアル?」 「え?えっと…確かジベレ…リンとかいう植物ホルモンの液に付けるんじゃないっけ…?」 昔どこかで聞いた記憶を辿りながら曖昧に答える。神楽ちゃんはふぅんと少し残念そうに言っただけだった。たぶん万事屋でつくろうとか考えてたんだろうな。いくらなんでもそれはちょっと厳しいよね…第一場所もないし。 「新八君は数粒ずつ食べるんだ。」 「はい、さんは?」 「私は一粒ずつかなー。」 「一粒なんて時間かかるアル!私嫌ネ!!!」 「えー、でも結構いいよ。」 貧乏くさいかもしれないけど。でも口に入れるたびに感じる甘酸っぱさが何度も味わえて何度も幸せな気分になれるもの。 「銀ちゃんは?どうやって食べるアルか?」 「あー?葡萄…ねぇ」 何を考えているのか分からない顔でブドウを眺める銀さん。そしてその視線はそのままスライドして私に向けられた。え、何? 「銀さ…むぐっ!!」 何が起こったのか分からなかった。生温いものが口に入って来たかと思うとぐるりと口の中を一周して出て行った。 ぷはっと息をはいて目の前を見るとニンマリと嫌らしく笑う銀さんの顔と呆然とした新八君と神楽ちゃん。あわす顔がなくて私は真っ赤な顔で俯いた。 「うん、やっぱこれだろ。口移…ヘブラっ!!!!」 私が何か言う前に新八君と神楽ちゃんの殴り&蹴りが銀さんにクリーンヒットした。 「、近づいちゃダメアル!!!こいつ危険ネ!!!!!」 「そうです!駄目ですこんな人と付き合ってちゃ!!」 「なっ!お前らが聞いてきたからやったんだろ!なぁ!!!」 そこは私に振る所じゃないでしょ。 とにかく。 「…銀さん。」 心の中で「の」と付け足す。 「馬鹿――――――――――――!!!!」 パァンと乾いた音が歌舞伎町に響き渡った。 2009.8.3 銀さん最後しか出張ってない…。 私の中で銀さんはエロ担当です(← |