「あはははっ!何それ!!」
「ねー、マジ笑えるよね!!」
「あーあ、笑ったらのど乾いちゃった。、ちょっとジュース買ってきてよ。」
「え…私…また……?」
「言い訳しないのー!ほら、行ってこーい!!」
「え、あ、ちょっと…。」
友達4名は私の背中を押して廊下へと追い出した。
私はただ呆然と長い廊下を見つめていた




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ガコンッ
「…何やってるんだろ、私…。」
ため息をつきながら3つ目のジュースを買うため、自動販売機にお金を入れる。
昔から内気な性格のせいで人付き合いが苦手で中学でも友達を作るのに苦労した。 そんな友達も高校はみんな別の所で私はまた一から友達を作るはめになった。
『しっかりね、ちゃんと友達作るのよ―――』
その言葉通り、私は高校で友達作りに全力を尽くした。 そして。頑張った結果できたのが今の友達。 オシャレが大好きで茶髪で化粧が少し(というかかなり)すごい人たちの集団。 その中で私だけがノーメイク黒髪。明らかに趣味が合ってないよ…。 私、どこで間違えたのかな…?そう思った時には時既に遅し。今更他のグループに行くことなんてできなくなっていた。 そんな私の様子に多分気付いている"友達"は私を扱き使うようになった。今だって。 今日で一週間連続ジュース買いにパシられている…しかも自腹で。そろそろお財布の中も危険地帯になってきちゃった。

やっと全員分のジュースを買い終わってパックを持って教室へ向かう。 5人分だから持つのも大変。なのに誰も手伝ってはくれない(友達、なのに…) 本当にこのままでいいのかな?でもグループを抜けて独りになるのは嫌だし…。
はぁ、ため息がこぼれ出た。その時。
「…う、うわっ!!」
ボーとしていたからか廊下に転がっていた段ボールに躓いて体が前に傾いた。だ、誰よこんな所に段ボール置いたの!!
やばい、こける――――。
手の中のジュースを手放して前に出す。だけど体制が悪くて例え手をついたとしても派手に転んでしまうだろう。
ギュッと目を瞑って歯を食いしばる。
その瞬間腕を引っ張られて重力に逆らって身体が止まる。た、助かった…?



「大丈夫??」
腕を掴んだのは隣のクラスの沢田君だった。
「え、さ、ささ沢田君?!」
男子に疎い(まだクラスの男子も半分くらい覚えてない位)私でも知っているほどの有名人の登場に思わず身構えた。 沢田綱吉君。獄寺君や山本君といつも一緒にいてその三人は女子にすごくモテル。 友達だけではなくてクラスの女子もみんなキャーキャー言っている人たちだからさすがに覚えていた。
「ごめんね、この段ボール俺たちが置いたんだ。邪魔にならない所に置いたつもりだったんだけど…。」
「う、ううん!!ボーとしてた私が悪いからっ!!!」
さっきまで思っていたことと真逆なことを言って床にちらばったジュースを拾っていく。 そんな私に沢田君も付き合ってくれて結構遠くまで散らばったジュースもすぐに拾い終えた。沢田君…やさしいなあ。 だから女の子にもてるんだろうな…。
「こんなに一人で飲むの?」
「ううん、友達に……ああぁ!!!」
いきなり叫んだから沢田君は驚いたみたいでびっくりして肩を揺らしていた。 だけどそんなことを気にしている暇はない。ふと時計を見たら休み時間はあと3分しかなかった。 これはヤバい。かなりヤバい…。
「沢田君ありがとね。これ、お礼!!」
そう言うと自分のジュースを沢田君に押し付けて私は教室へと大急ぎで帰った。
















「もーって本当にドジだよねぇ〜。」
「あ、あはははははは…ごめんね。」
「罰として明日は一人2パックね!!」
「え、そんな……。」
「なあに?誰のせいで昼休み飲めなかったと思ってるのー?」
「…………。」
放課後、教室の片隅でジュースを飲みながら喋っていた。
本当は帰って宿題をしたい。だけど"友達"だから。仲良くしなきゃ、なかよく…。
ってさぁ、せっかく私たちのグループに入れてあげてるんだからもっとしっかりしてよ〜。」
「そうそ……ね、ねぇ。あれっ!!!!!」
みんなの顔が驚きの表情になって仄かに頬が赤く染まった。
なんだろう?今まで下げていた顔を上げて視線の先を見ると、そこには沢田君たちがいた。
「え、沢田君…?」
バチリと視線がぶつかって沢田君は仄かに微笑んだ。
「ちょっと…いいかな?」
もしかして私―――?
「う」
私が答える前に席を立ちあがって笑顔で沢田君にしゃべりかける友達。
「沢田クン!どうしたの?私のクラス来るの初めてだよね!!!」
「マジ超ラッキー!残っててよかった!!ねェ、一緒に話そうよ。」
「そうそう!獄寺君と山本君もほら座って!!…あれ、椅子足りないね。ちょっとどいてて。」
「う、うわっ」
ドンッと背中を叩かれて私は滑るように椅子から落ちた。それと同時にその会話の輪からも外れて。
私は一人取り残された気分でその輪を見つめた。
…やっぱり気のせいだったのかな?大体沢田君みたいな人が私なんかに用がある訳ないのに。
あの時、返事遮られてよかったのかも。でないとまた笑われちゃってたよね。
席もなくなって私の居場所もなくなって。…もう、帰ろう。私がいないことなんてきっと誰も気がつかないんだから。
机に投げてあったカバンを掴んでそっと教室を出て行こうとした時だった。
本日二度目、パシリと腕を掴まれた。しかも、同じ人に。
「…悪いけど、俺さんに用があるんだ。…獄寺君、山本。後いいかな?」
「はい、十代目。お気をつけて。」
「頑張ってこいよ、ツナ。」
「うん。ありがとう。」
そう言うとそのまま沢田君はポカンとした私を引っ張って教室を後にした。












長い階段を上ってついた場所は屋上。
昼間は青かった空も今は橙色に染まっていた。
「ごめんね、さん。勝手に連れてきて。」
沢田君はやっと私の手を離してくれた。強く掴まれていたわけじゃないけど掴まれたところは微かに熱を持っていた。
「う、ううん!!」
「…これ、渡そうと思って。」
そう言ってポケットから取り出したのは小さなお財布……ど、どこかで見たことがあるような…。
「って、それ!私のっ?!」
急いで自分のポケットを探るけど見当たらない。いつの間に落としたんだろう…。
「たぶん躓いたときに落ちちゃったんじゃないかな?はい。」
「そっか…ありがとう!!」
拾ってくれたのが沢田君でよかった。これがないと明日からのパシリ予算がなくなるところだったから本当に感謝だ。
「…さんって友達、合ってないよね?」
「あー…。うん、私友達作ったりするの、苦手で…。」
今日知り合ったばかりの沢田君でも分かるくらい合ってなかったかな………うん、あってなかったかも。
「…そっか。あの、じゃあ明日から俺たちと一緒に弁当食べたりしない?いつも屋上で食べてるんだけど…。」
「……え?」
「そ、そりゃクラスでは浮いちゃうかもしれないけど合わない人たちと一緒にいて嫌な思いするよりはいいかなぁと思って。…あ、でもさんがいやなら全然いいから!!!ど、どうかな?駄目、かな?」
慌てたようにぺらぺらしゃべる沢田君がなんだか面白くて、つい。
「…っぷ。あはは!」
昨日まで沢田君ってもっとクールな人かと思ってたけど全然そんなことない。
他人思いですごく優しい人だ。
「……。」
「え、あ、ごめん笑っちゃって。気悪くしたよね。」
「え?ううん!!!俺が笑ってる顔好きだから!!」


「…え?」
それってまるで前から私のことを知ってるみたいで少し戸惑った。
今日会うのが初めてだよね…?
「あ、あ――――…。」
沢田君はどんどん顔が赤くなっていく。何がなんだかさっぱりだ。
そもそもどうして沢田君は私の名前を知っているんだろう?対して有名でもない…寧ろ逆に地味な私なのに。
どうして―――?
「…お、俺、入学した時からずっとを見てたんだ。付き合ってくれないかな?」
真っ赤な沢田君の顔、その顔に便乗して私の顔も赤くなっていった。
あのモテモテの沢田君が入学した時から私を?そんな、そんな夢みたいなことあってもいいのかな?
「あ…えっと…よ、よろしくお願いします。」
胸のドキドキが収まらない。












しくかな灰かぶり
(出会ったばかりの彼に、恋をした)













ほら、まただ。彼の笑った顔に胸が跳ねた。

++++++++++++++++++
Marchenさんへ提出長編。
ちゃんとお題に添えていけるか心配ですが頑張っていきます。
ほのぼの(途中シリアス)を目指して行こうと思うので宜しかったらお付き合いください。

ひとりひとり違うから人間なのに逆にそれが仇になることもあるかもねというお話でした。
次回からは全然違う論点ですが(←
あ、ちなみに獄寺君と山本君は後にそれぞれの方法でお友達をうまく撒きましたとさ。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

2009.1.4