「ツナってのこといつ好きになったんだ?」
いきなりの質問に俺はポカンと口を開けた。
U
「沢田君…?」
「わっ、ごめん!何?」
「あ、いや…ボーとしてたから大丈夫かなって…。」
帰り道。付き合いだしてから気を使っているのか山本と獄寺君は一緒に帰らない。
さんと二人きりの帰り道…付き合う前はこんな日が来るとは思わなかったから嬉しくて堪らなかった。
初めのころはお互い緊張してて会話がほとんどなかったけど今ではぽつぽつと話すようになった。
もともとさんはあまり喋らない子(だからあんな友達に引っ掛かったんだろうけど)だけど、ただ傍にいるだけで、そのことだけで俺は安心できた(重傷だな、これ…)
でもさんは?
今日山本に質問されてよく考えたらさんにとっては出会ったその日に告白された訳だから正直分からないことだらけだと思う。
も、もしかしたら「とりあえず付き合ってみようかな」って感じでいるのかも…。
考えたらそれが本当な気がしてきて(さんは優しいからなんだかありえそうだし…)……まあ、それはそれで別にこれから好きになってもらえばいいからいいんだけどね。
でもそうなると俺は好かれるように努力しなきゃいけない。
とりあえず、まずは俺のことを知ってほしかった。
「俺がさんのこと知ったのは入学式の日なんだけど、でも学校じゃないんだ。」
「え…?」
行き成りの話でさんは目を丸くした。だけど俺はお構いなしに話し続けた。止めたら恥ずかしくて言えなくなっちゃいそうだから。惚れた話なんてそんな簡単に話せることじゃない。
あれは入学式の帰り道。
獄寺君も山本も用事がある。さらにリボーンも今イタリアに帰っている。
だから俺はのんびり河原でくつろいでいた。
なんだかみんなに会う前の自分に戻ったみたいで少しだけさみしい気分だった。こういう時に改めて友達の大切さが分かるんだな…。
要は何だか気分が落ち込んでいてぼんやりしていた、そんな時だった。
「わっ!!」
河原で遊んでいた男の子(ランボよりちょっと小さいかな…?)が派手に転んだ。経験済みだから分かるけどあの転び方は相当痛い…。
案の定男の子は泣き出してしまって俺は仕方なく腰を上げて、その子の元に向かおうとした。
だけど、俺よりも速くその子に駆け寄った少女を見て俺は足を止めた。
「だ、大丈夫っ?!」
同じ学校の制服を着たその少女は男の子の前でしゃがむと必死に怪我の具合を見ていた。そして少し顔をしかめるとポケットから出したハンカチを水で濡らすと優しい手つきで傷口を拭き始めた。
「…ぅ、痛いよぉ……!!」
水が傷口にしみるんだろうな。男の子の鳴き声はさらにひどくなった。
「ええーと、うん、痛いね!痛い…い、痛いの痛いの飛んでいけ――――!!!」
思わずこけそうになった。こ、古典的…。
少女は何度もそう叫んだ。たぶん小さい子の扱いに慣れてないんだと思う。たぶんあれが、彼女の精一杯なんだ。
だけどそんな努力もむなしく、男の子は泣きやまなかった。
「い、痛いの痛いのっ…ぅぅ…!!!!」
繰り返し叫んでいたのにいきなり少女は黙りこんで顔を沈めた。思わず俺も男の子も心配になって少女を見つめると、彼女は小声でこう言った。
「…し、舌噛んじゃった…。」
本日二度目、こけるかと思った。
でも彼女にとっては一大事らしくて涙目で苦しんでいた。かなり強く噛んだんだなあ…。
「っぷ、あははははははははははっ!!!」
そんな様子がおかしかったのか、今まで泣いていた男の子は大爆笑で少女を指さした。
終いには転げまわりながら笑う姿に少女はポカンとしている。男の子はさっきまで痛みで泣いていたのに今は笑いすぎで泣いていた。
「お姉ちゃん変なの―――!!」
「え、え?…変かな?で、でも!!痛かったんだよ!!!」
「うん。僕も痛かったけどお姉ちゃん見てたら治っちゃった!!!」
「え。本当?」
「うん!!!!!」
それってドジをした本人としては恥ずかしいことなんじゃ…。だけど彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「そっか……よかったぁ。」
その柔らかい笑みが頭から離れなかった。
だけどそれを恋だとは思わなくて。
俺は二人に背を向けて河原を後にした。
次の日、俺はたまたま廊下で彼女を見かけて。なんとなくクラスと名前を調べて。
気がつけば頭の中は彼女の笑顔であふれていて。
休憩時間になれば目が勝手に彼女を探していた。
その時俺はやっと、これが恋だと気がついた。
「……今思えばただの一目ぼれだったんだよね、これ。」
「さ、さささ沢田君あれ見てたのっ?!(は、恥ずかしい…!!)」
隣にいるさんの顔は真赤になっていて。そんな姿がとても愛おしいと思ってしまう。
ああ、やっぱ俺、重傷だ…。
こっちまで顔が赤くなりそうなのを抑えるため無理やり前を向くともう直ぐいつもの別れ道だった。
俺の家とさんの家は決して近くない。つまり、結構遠い。
別にそんなの気にしないから送っていってもいいのにさんは気にするみたいでいつもここでお別れだった。
「…私も。」
「え?」
「私も…一目ぼれ、だよ。」
真赤な顔でそれで尚微笑む姿にしまったと思った。
これじゃさっき顔をそむけたの意味がないじゃないか………俺の顔は赤く染まっていった。
ピタリと、二人の足が止まる。
別れ道だった。
「あ、じゃあまた明日ね…!」
「…。」
「さ、沢田君…?」
自分を止められない。もっと一緒にいたい、そう思った。
「あのさ、今から俺の家来ない?」
「え、え?行き成りどうしたの?」
「あ……えっと、俺の家にもチビがいてさ。さん小さい子好きみたいだから会ってみたいかなぁって思ったんだけど…。」
嘘、今考えたんだけどね。
そうでもしてでも一緒にいる口実が欲しかった。
それに幸いなことに今日はリボーンがいない。
「そうなんだ…。行きたい…かも。」
俺はさんにとってどういう存在なのか。
さっきまで考えていたのが馬鹿らしくなった。
さんは俺の彼女。それが、答えだと思ったから。
ためらっている彼女に俺は手を差し出した。
「…おいでよ。」
かぼちゃの馬車と舞踏会
(案内役も王子様も全部「俺」の仕事だから)
震えた指先が触れた瞬間、逃がすもんかとそれを掴んだ。
++++++++++++++++++
いまいち…?
あんまり気に言ってないけど私の表現力ではこれが限界なのです…。
ツナ視点難しいです。
ではここまで読んで下さりありがとうございます。
2009.1.5