「出血はひどかったみてぇだが痕は残んねーな。ほい、これでもう大丈夫だ。」
「ありがとうございます、シャマル先生。」
「いやいや、礼なら体で…」
「シャマル。」
「…チっ。」




X




朝教室に入ってきた私を見てみんなはぎょっとした視線を送った。
頭と手に(足もあるけど靴下で見えないからいいとして)包帯巻いてたから納得できるけどね。
「…、それどしたの?」
話かけてきたのはあの"友達"だった。その表情がすごく心配したものだったから私の方が驚いた。
「あ…車に撥ねられちゃって……。」
拉致されましたなんて言えないからそう言えと昨日リボーン君に言われてた。私はその言葉を反復する。
「はぁ!だからもっとしっかりしなさいって言ったのに…。アホ!!」
「う…ごめんなさい…。」
友達、やめたはずだったのに。優しい言葉が胸に響いて私はぽろぽろ涙を零した。
「…どうしたのよ、。私たちの所離れて元気そうにしてたじゃん。最初はそりゃ私たちもイラついたけどさ…さすがに悪いことしたと思ってたから何も言わなかったんだよ。だけど今日のなんか変じゃない?」
どうして気付かなかったのかな?本当はみんな、こんなにも優しかったのに。離れていてもちゃんと私のこと見ていてくれていたのに。
だけど私は自分一人のことしか考えてなくて。
「つ、綱吉君が……」
「うん。沢田君が?」
「わ、別れようって……。」
涙が止まらない。悪いのはきっと全部私なのに…。












「いいのかよ、ツナ。」
「十代目…。」
「…仕方がないんだ。にこっちの世界は向いてない。」
机に顔を伏せた。こんなひどい顔誰にも見せたくなかった。
分かってたのに。否本当は分かってなかったのかも。だから告白もして彼女の行動や言動に一喜一憂して。
「ダメツナが。」
いつの間にかリボーンもいて俺を蹴っていた。
「マフィアのボスになるやつが女を泣かせてどうすんだ。」
「だって、俺……。」
「言ってもねぇのに勝手にの気持ちを無視するな。ダメツナなんだから当たって砕ければいいだろうが。」
当たって砕けるって…砕けること前提なのかよ…。
…でも。
「…そう、だな…。」
何も言わずにこうやって後悔するよりもしっかり振られた方がいいのかもしれない。
俺は立ち上がって教室を後にした。












「はぁ?いきなり振られたぁ?!」
、あんた心当たりないの?」
そんなのありすぎる。もしかしてすぐ顔が赤くなるところ?ウザいって思っちゃったのかな?帰り道も会話少ないしもっと話した方がよかったのかも。考えれば考えるほど出てきて嫌になる。
「でもさぁ、。」
「…?」
「どうせ振られるんだったらさ、想いをちゃんと言ってきた方があんただってスッキリするでしょ?」
「そうだよ、いっその事こっちから沢田なんて●○だー!!ってふってきちゃえよ!」
「え?」
「そうよ、なんなら一発殴っちゃえばいいじゃない!男前なんだから一発殴るぐらい平気だって。」
「あんた…それ、逆だから。」
「え、えええ?」
なんだか私がぐずぐずしている間に話はどんどん進んでいく。そう言えば、と以前の関係を思い出す。この人たちはこういう人たちだったのかも。思いつくことをどんどん口に出して私だけいつも置いてかれていて。だけど前と違うのは今、私もこの輪に入っているということだった。話には参加できてないけどちゃんと一緒にいる、そうい感じ。
「って、!!噂をすればじゃん!!」
友達は教室のドアを指さした。
「…え?」
振り返るとそこには、綱吉君がいた。
















屋上。たくさんの思い出が詰まった場所。告白されたのもここだし、お昼ごはんもここで食べた。そんな場所に私たちはやってきた。
「ごめん、いきなり…。」
「う、ううん…。」
いつもと同じ場所なのになんだか違う場所みたいだ。暖かいはずの日差しもなんだか今日は冷たい。
、これから言うことをよく聞いてほしいんだ。」
「……はい。」
何を言うのかは分からない、だけど綱吉君の眼は真剣そのものだった。
「俺は………ボンゴレっていうマフィアのボスなんだ。」
「マ、フィア…?」
「昨日を拉致したのはニトロファミリーっていうマフィアのベンゼンっていう男で最近イタリア本部のボンゴレに殲滅されたマフィアだ。それで復讐に俺を殺そうとしてが利用された…だから昨日のもはありがとうって言ってくれたけど本当は俺のせいなんだ。ごめん…。」
そう言えば昨日の男の人、ボンゴレボンゴレ言ってたっけ…あれ、綱吉君のことだったんだ…。
まるで嘘のような話だけど綱吉君の真剣な眼が真実だと告げていた。
「俺はマフィアのボスだからこれからもそう言う世界で生きていかなきゃいけない。でもは似合わないって思ったから。だから昨日別れようって言ったんだ。」
少しだけ、安堵した。綱吉君は私を嫌いになったわけじゃなかったから。
それに綱吉君の言うことは正しい。確かに私はマフィアなんて似合わない。
でも、でもね…私は綱吉君のこと…。

『いっその事こっちから沢田なんて●○だー!!ってふってきちゃえよ!』
『なんなら一発殴っちゃえばいいじゃない』
さっきの話が脳裏に浮かんだ。右手に力を込めた。
この感情を一言で表すなら、きっと「怒り」だ。





バシッ





「…へ?」
音が聞こえてしばらくした後に頬がジンジン唸った。叩かれた…?
「綱吉君の阿呆―――――!!!!」
が叫ぶところなんて初めて見たし、に叩かれるなんて思わなかった。いつもにこにこ微笑んでいるあのが。
涙をボロボロ流して俺を睨んでいた。それほどのことを、俺はしたんだと自覚した。
「私は、綱吉君のこと好きなんだよ!マフィアとかそんなの関係ないじゃない!!どうして一人で決めつけちゃうの?!」
その瞬間俺はを抱きしめていた。その一言で、十分だったから。嬉しくて、強く強く抱きしめた。
『ダメツナが。』
そう言う家庭教師の声が聞こえた気がした。
うん、俺…ダメツナだ…。自分から告白して勝手にふって。たくさん彼女を傷つけた…。
「ごめん、……。…ありがとう。」
嗚咽の中、はそっと俺の背中に手をまわした。












今度はもう逃がさない
(もう絶対に、この手を話したりしない)















(よかったなツナ)(おめでとうございます十代目)(いいビンタだったぞ)((いたの―――――!!!!))

+++++++++++++++++
下書きが気に食わなくて一発本番です;
因みにベンゼンとニトロって言うのは化学に出てくる単語を使わせてもらいました;(ニトロベンゼンという有機化合物があるのです…)

企画連載もこれにて終了です。
本当は1話だった作品がなぜか5話になったということで変なところも多かったと思いますがここまでのお付き合いありがとうございました。
そして素敵な企画ありがとうございました。

2009.1.12