「…肝試し?」

「うん、ちゃんも行くよね?」
「え、あ、えっと…」
「あ、こういうの苦手?でも皆来るしそこまで怖くないって言ってたから大丈夫だよきっと!ね、行こうよー。」
「うわっ!分かったから!!抱きつかないでよー!!」
「よし!じゃあ決まり!伝えてくるねー。」
…なんだか嫌な予感しかしない。








「それじゃあくじを引いて男女一人ずつのグループになってくださーい!」
その声と共にみんなが一斉に動き出す。私も友達に手を引かれるままくじを引いた。
「何番だった?」
「んーと、4番…」
なんだか不吉な数字だなぁ…。
本当は来たくなかった。寝るときだって真暗で寝られない私がき、肝試しなんて…!!今も足が震えて止まらない。今からでも家に帰ってテレビでも見ていたい。今日は気になるドラマだってあったのに…まぁ予約して来たけどさ。
だけどここまで来たからにはもう帰る訳には行かなくて。せめて山本君みたいな怖いものなんかなさそうな、明るい人と一緒に回れたら…そんなはかない願いを胸に抱いていた。
……のに。


(………最悪だ)

よりによってなんでこの人……。
私と同じ4番を引き当てたのはイタリアからの転校生、獄寺君でした。
ちゃんいいな―!!あの獄寺君と一緒なんて羨ましいよ!!!」
私なんてダメツナだよー、そう言う友達。
どこがいいの、取り替えてほしいよ…いや、ツナはツナで頼りにならないから嫌だけど…でも獄寺君よりはマシかも。
(だって、獄寺君も……すごく怖い)
いつもイライラした顔でタバコ吸っていて目付きが…というか全部怖い。たまになぜか私を睨んでるし。
そんな獄寺君とよりによって肝試しで一緒なんて…怖いものづくしじゃないか………!!もう泣きそうだよ!!!!!

「じゃあ1番から順番に入ってください。」

やっぱりかえて貰おうかな…ツナだったら逆に一緒に怖がってくれて結果オーライかもしれない。

「次ぎ2番の人―」

いや、でも怪しまれちゃうよね…獄寺君人気者だもん…怖いのに。

「3番―」

でもでも、獄寺君なら一人で肝試しできそうだよね!私これなら帰ってもばれないんじゃ…

「4番―――」

体調が悪くなったとか言って抜ければきっと大丈夫だよね。よし、そうと決まればさっそく―――

「おい」
「……へ。」
聞こえた声に変な声をあげて声の主を見る。呼ばれたのって…私、だよね?目の前にはいつもの通り機嫌の悪そうな獄寺君がいた。
「お前4番だろ、さっさと行くぜ。」
「え…あ……」
「あ?何だよ。」
「(こ、怖い…!!!)い、いえ!!何でもないです…!」
何か口答えしたら殴られるんじゃないか。
そう思うともう何もかもが嫌になった。だけどもうここは腹をくくるしかない。嫌よ嫌よも好きのうち…ってこれは違うくて。つまり―…女は度胸、いざ逝かん!!違う違う、それじゃ違う世界に行っちゃうよ、えっといざ行かん!こっちだ!!!
そんなことを脳内で考えながら私は獄寺君の後に続いて歩き始めた。









肝試しは街外れにある墓地で行われていた。
ルールは奥にあるお札をとってくるというすごく一般的なもの。ちなみにそれぞれの組に一本ずつろうそくが配られてそれによって道を照らす。おばけ役は後半のチームがやっていて私たちも後ですることになっている(何をするのかは個人で決める。ちなみに私はこんにゃくを持ってきたりしてみた)
私と獄寺君は進み始めてから一切会話をすることなくただ黙々と気まずい雰囲気の中、墓地を進んでいた。
今のところこれといって怖いことはなくて(強いていうなら獄寺君。オーラだけで怖い…)もしかしたら意外とみんなやる気ないのかも。そう思って少し安堵の息をつきかけたところだった。


ガサ……


「ひっ!!!」
い、今何か音したよね…?!それだけなのに足が竦んで動けなかった。獄寺君はそんな私の様子に気付いていないみたいでスタスタ先に行っている。呼びとめなくちゃ、そう思っても怖くて声も出ない。どうしようどうしよう…だけど視線は音がした方へと向いてしまう。怖いのに、すごく…でも目が離せない。
暗闇から出てくるのはお化けかそれとも―――――



「ワン!」


「ぶへっ」

重たいものが私にのしかかり重力に逆らうことなく地面に倒れこんだ。
こ、この声は…
「ハ、ハヤト…?!」
「ワンっ!!」
やってきたのはお化けでも怪物でも火の玉でもなくて…我が家の愛犬:ハヤトだった。ちなみにコリ―犬♂で2歳だ。飼っている私が言うのもなんだけど、うん、すごくかわいい。
「びっくりした…もしかしてついて来てたの?」
「バフ」
「うん…ありがとう。」
ぎゅっと抱きしめる。暖かい。

っ………何してんだよ。」
「あ、獄寺君!!ご、ごめんはぐれちゃって!」
引き返してくれたらしい獄寺君にあわてて謝る。その息は少し乱れてて…走って来た、のかな?いやいや、怖い人のはずの獄寺君が走ってくる訳がないよね!多分怒りの息切れだよ。自分で考えてもよくわからないけど。
「別に無事ならいいけどよ……それ、お前の犬か?」
「うん、ついて来てたみたいで…。」
「ってかお前止まるなら何か言えよ!!分かったか!」
「は、はいっ!了解でアリマス!!」
あれ…?怒ってない……?いや怒ってるけど予想と全然違うというか…。もしかして獄寺君は本当に心配して走って来たのかもしれない。そう思うと胸のあたりがなんだかポカポカした。
たいして興味なさそうに軽くハヤトを見た獄寺君はさっさと行くぞと再び前を見た。私もそれに従い今度こそはぐれないぞと意気込む…と、私の目の前には自分のものより一回り大きな掌が。
「次はぐれたらもう知らねェからな。」
「…へ?」
「……っ!だからはぐれないように、だ!!!!!」
乱暴に手を掴まれると獄寺君は早足で進み始めた。それに引っ張られて私もこけそうになりながらも前へ進む。
ポカンとして視線を獄寺君に向けるけど前を向いていて見えない。だけど耳は暗くてもわかる位真っ赤でびっくりした。あれ、獄寺君って…。
「ワン、ワン!!!」
「うわっ、ハヤト!!!!」
「…は?」
「あ、この子、ハヤトって名前なの。」
「…………。」
「?ど、どうかした?獄寺君。」
「…いや、何でもねぇ。」





もしかしたら、そこまで怖い人じゃないのかもしれない。








真夜中の Concerto








獄寺君のお蔭なのかそれともハヤトのお蔭なのか分からないけど肝試しは私が思った以上に楽しいものになりました。
































++++++++++++++++++++
新刊読んだら書きたくなった獄寺君。
でもキャラがイマイチ掴めてなかった……。

ヒロイン←獄寺的な感じ。
初々しい感じを出したかったです。
それにしても季節外れだなぁ…。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

2010.3.10