なんだかごちゃごちゃしてて5,6日家に帰れなかった。 否、帰らせてもらえなかった。 僕は帰ろうと思ったのに綱吉や赤ん坊がこの仕事が終わるまでは我慢してくれと言われたから。 綱吉にいたっては黒い微笑みだった。 久しぶりにゆっくり休めるしに膝枕でもしてもらおうかな、そう思って家の玄関を開けると。 パンッと大きな音がしたかと思うと周りに赤や黄色のテープが飛び散った。 原因は玄関に立っていた彼女、僕の大切な人、。 すごく安心したような、それでいて嬉しそうな顔で彼女は微笑んだ。 「おかえりなさい、恭弥!!」 今回の仕事は大変だったんだろう、帰って来たばかりの恭弥の顔はボケっとしていた。 「…何、これ?」 私が声をかけてから数十秒後、やっと状況が飲み込めたらしく私が手にしているクラッカーを見て言った。 「何ってクラッカーだよ。パーンて音したでしょ?」 「いや、そんなこと聞いてないよ。何で鳴らす必要があるわけ?」 もぞもぞと靴を脱ぐ恭弥、いつもの動作、でも久しぶりに見るそれ。 当たり前の動作なのに彼が今ここにいるということが感じられて、思わず頬の筋肉が緩んでしまう。 一人でニヤニヤしている私を不審に思ったのか恭弥はこちらに視線を向けてきた。 「だ、だって!今日はクリスマスだよ。綱吉君に恭弥が今日帰ってくるって聞いてたから張り切っていろいろ準備したの!」 綱吉君から連絡が来たのは今日の朝。 仕事片付きそうだから今日は雲雀さん帰れると思うよ。 そういえば今日ってクリスマスだよね、雲雀さんにプレゼントとかあげたら喜ぶだろうね。 そう言われて何も準備しない訳にはいかない…なんだか綱吉君に仕組まれているような気がしてならないけど。中学の頃にはあんなに素直だった彼がこんなにも腹黒くなるなんて一体だれが想像できただろうか。 でも恭弥が帰ってくるという事実は変わりないし何より久しぶりに会えるのがうれしくて仕方がなくて大急ぎで買い物に行って食べ物買い込んだ。 プレゼントも2時間くらい悩んで買った。 なんだかんだいって一番張り切っているのは私だった。 それにしても玄関は寒い。 外は雪も降っているみたいでじわじわとその寒さが伝わってきた。 でもリビングは暖房が付いているからしっかり温もってるはず。 それにそこには私が苦手な料理と格闘した結果の産物もある。 味見したけど結構おいしかったから今回は成功のはず、だ! 前塩と砂糖間違えたときはどうしようかと思ったけど。 「チキンとかも焼いたんだよ、だから冷める前に食べようよ恭…」 恭弥の手を引きながら言うと逆に引っ張られて言葉が詰まった。 そして足が宙に浮いたと思ったら行き着いた先は恭弥の胸の中。 「…冷たいね。もしかして僕が帰るまでずっとここで待ってたの?」 ギクリ。 「リビングは暖房付いてるんでしょ?…馬鹿?」 「だ、だって!!久しぶりに会えるから、待ちきれなくて…」 自分で言いながら恥ずかしくなってきて顔を下に向けた。な、なんてクサイことを…。 この際言い訳にしか聞こえないけど最初はちゃんとリビングにいたんだよ。 でも待てば待つほど孤独感が増してきて居てもたってもいられなくて、とはいえ仕事場に乗り込む訳にいかないし…と考えた結果結局玄関で待機。 あまり変わらないかと思ったけど玄関の微妙な寒さが寂しさを紛らわしてくれた。 「…ホント、馬鹿だね。」 物々言い訳を呟く私をぎゅっと抱きしめてくれる恭弥。 恭弥も冷たかった。 でもじわじわぬくもりが伝わってきて。 (…恭弥の、匂いだ。) ひどく安心した。 ここ数日、どんなに願っても会えなかった、大切な人。 「恭弥、好きだよ。」 「うん、知ってる。」 そう言って恭弥は更に付け足して言った。 「…僕もだけど、ね。」 近付く顔、唇が触れるまで、あと一歩。 and kiss me 会えない時も寂しくならないようにあなたの温もりを私にください。
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