大きな音と共に目の前が真白になったかと思えばそこは知らない場所だった。 白い煙がはれても視界は真白で、そこで自分が白い部屋にいることにようやく気がついた。 「ここ…どこ?京子ちゃん?ハルちゃん??」 さっきまで一緒にいたのに、今は誰もいない。 辺りをよくよく見てみるとどうやら私はベッドの上にいるようでしかもそれも白いからまるで世界に色がなくなったみたいで怖かった。 「…っ。だれか…。」 ここはどこ、どうなってるの?? パニックに陥りそうなその時、後ろからガチャリと音がした。 そこには唯一白くない茶色のドアがあってそれが開いたみたいだ。 「………ひばり、さん?」 やってきたのは私の恋人、雲雀さん…? って思ったけどあれ、もしかして違う人?? 背も高いし髪の毛も短い。そして真黒なスーツを着ていた。 いつも見ている学ランの青年とよく似ているけど微妙に違う。 「…?!」 スーツの男性がこちらまで走ってきた。 ああ、やっぱり別人だ。雲雀さんが焦るように走ったところなんて見たことないもん。 でもなんでこの人は私を知ってるの? 「君…もしかして10年前の…?」 じゅうねんまえ・・・??? 「あの、あなたは…?」 「僕は雲雀だよ。君から見たら10年後の雲雀恭弥。」 「じ、10年後…?」 「うん、ここは10年後の世界。」 そんなことありえるか―――!!!と、言いたいところだけどそういえばツナ君の家にいる男の子がそんなことできるとか前聞いたことがある気がする…。 まさかあれ、本当だったの?! 驚いてポカンとしている私を、雲雀さんはいきなり抱きしめてきた。 「え、え??雲雀さん…?どうかしましたか?」 声をかけても何も言ってくれないし逆に抱く力が強くなった。黒いスーツしか見えない。 雲雀さん…少し、震えてる…? 「…ひとつ、聞いてもいいですか?」 「…………何?」 一つ息を吸う。これは聞いちゃいけないような気がする、でも聞かないといけない気もする。 そんな矛盾が頭の中をぐるぐる回るけど。ええい、なるようになれ。 「私、どうしてここにいるんですか?」 清潔な白い部屋、音もないくらい静かな場所。 たぶんここは、病院だ。 「君は3日前、…ある組織の襲撃にあって重傷を負った。…3日たった今もまだ危険な状態だ。」 雲雀さんは苦しそうな表情で言葉を吐きだした。 頭を何か固い物で殴られた気分だった。 襲われて、重傷…。今度は私が震えだす番だった。 考えただけで、吐き気がする。 だから私はこんな白い部屋にいて、雲雀さんは普段見せないほど焦っていて抱き寄せて。 私は、私は10年後に死ぬかもしれない…?? 「ごめんね。」 「え…?」 現在進行形で抱きしめられてるからやっぱり顔が見えない。 見たいのに、雲雀さんのすごくきれいな顔。 きっと10年たっても変わってないはずだから。 「君が襲撃を受けた時僕は海外にいた。そんなのただの言い訳にしかならないけど、でも守れなかった……僕の、所為だ…。」 雲雀さんの顔が見たかった。 どんな顔でそんなことを言ってるの? きっと苦しそうな顔をしてるんだろうな。そう思うだけで涙が出てきた。 この世界に入る時、は何があっても守る。そう誓った。 そう言ったら彼女は笑って言った。 『うん、ありがとう!でもね、多分それは無理じゃないかなあ。』 『なんで?僕が弱いって言うの?』 『いやいやいや、恭弥君十分すぎるほど強いから。 そうじゃなくて人生何が起きるか分からないでしょ?どうしようもできない時もあると思うんだ。』 「ぅぐっ…、ぐすっ…」 気が付くと抱きしめているが泣いていた。 当たり前だ、未来の自分が死にかけているんだから。それも、僕のせいで。 「…っ、ひ、雲雀さんは、わる、くない、です…!!!」 『もしかしたら死ぬ、そう思ったらすごく怖い、怖いよ。でも…』 「上手くは、言えない、けど。たぶん未来の私も、そう、思って、ると、思う、から。」 『勘違いしちゃいけないから言っとくよ。例え私が死んでもそれは、恭弥君のせいじゃないよ。』 「私が、けがをしたのは全部、私の、せいで。でも私、ずっと覚悟、してます。今だって…私は、私は…!!!」 『私、この世界に入る覚悟ちゃんとできてるから。恭弥君が思っている以上にちゃんと考えてるんだよ。 だから、そんな不安そうな顔しないで…。』 「…っもういいよ、もういいよ!!」 抱きしめていた手を緩めての顔を上げさせた。 涙でぼろぼろの顔が視界に入る。 「…ぅ…っ悔しいです。せっかく雲雀さん、の顔、見れたのに。涙でよく、見えません…」 『私が倒れたて死んだとしても、恭弥君はいつものみたいに笑っていてね。』 ――私、恭弥君が笑った顔を見るの、大好きだから―― 「…ありがとう、。」 僕は、君を分かっていなかったのかもしれない。僕はこんなにも弱くて、君はこんなにも強かったから。 守っていたと思っていたのに、いつの間にか守られていたのは僕だった。 今更気付くなんて、ね。 感服するほどの覚悟は強かった。 「…やっと泣きやんだね。」 「す、すみません…。」 瞼が真赤に腫れている。その姿がなんだか笑えた。 「じゃあ行こうか。」 小さなの手を引いて病院を出る。 本来この病院に残していくべきなのかもしれない。そう分かっていても離したくなかった。 大丈夫、今度は絶対に守って見せるから。 「行くって、どこに行くんですか?」 きょとんとして聞いてくるに僕は笑って言った。 「未来を変えに、だよ。」 (全てはこの手のぬくもりのため。迷うことなんて何一つなかった。)
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