「ツナはさ、恋することってどういうことだと思う?」


机にかじりついていた彼の頭がゆっくりと浮上し、プリント一直線だった瞳が私をとらえた。
窓の外から聞こえる音は野球部のもので、教室から野球場までは結構距離があるはずなのにすごいと思った。あの中に山本もいるのかな?きっと野球バカである彼のことだからそれはもう楽しそうにやっているんだろうな。色々な声が聞こえたが流石にあ、これ山本の声だと断言することはできないけれど、元気そうにグランドを走り回っているだろう彼を想像すると何となく頬が緩んだ。
外はもうすっかり赤く染まっているのに、山本にしろツナにしろ、まだまだ終わりそうにないことを必死にやっていた。あ、ちなみに獄寺はダイナマイトの補充とか何とかでしばらく学校を休んでいる。一体彼はあんなに多くのダイナマイトをどこに隠し持っているのだろうか。マフィアやめてマジシャンになった方がいいと思ったことがあることは、秘密の話だ。
窓の外を見ていた視線を再び目の前にいるツナに移すと、色素の薄い髪が透けて見えた。
あぁ、綺麗だなぁ。
胸が少しときめくのを感じながらも平静を装った。

「どうしたの?いきなり。」

「いや、何となくいいてみただけ……。それより宿題終わりそう?」
「ううん、まだまだ…手伝ってくれればいいのに。」
「嫌だよ。自分で頑張りなさい!」
「ちぇー……」
物々言いながら再びシャーペンを紙に走らせる。だけど物の数秒もしないうちにそれは止まってしまった。
あ、やっぱ駄目だったか。
つい考えていたことが口に出てしまい、内心あわてながらそれでも普通な感じで話をそらしたんだけど、やはり現実はそんなに甘くはないらしい。疑わしげな瞳をこちらに向けてくるものだから、悔しくなって遠慮なしにため息をついた。こういう時に彼の超直感は厄介だと思う。


「…はどう思うの?」

でも。
確かに厄介だけど、彼はすごく優しいから。
私の言いたいことやいいたくないことを察してくれる。
これも超直感で察しているのかな?




「私はね……変になることだと思うの。」


「……変に?」
「うん、だって恋って漢字と変って漢字、似てるじゃない。ツナもよく間違えて書くし。」
「な、書かないよ!!!」
「嘘、この前見たよ。」
「………」
恨めしそうな視線を向けてくるツナに満面な笑みで返しておいた。そして彼が何も言わないことをいいことに、話を続けていく。
「これってきっと漢字を作った人も恋と変が似てるって思ったからだよね?」
そんなことツナに聞いたって分かる訳がない。
分かるのはきっと作った張本人しかいないんだ。でも、そうであると信じることはなんだかとても素敵なことに思えるから。ツナにもそう思っていてほしいと思った。



「じゃあは…変、なの?」

その言葉にどきりとして、顔をそむけようとしたけどツナの視線は相変わらず私一直線で、そらすことはできなかった。




「………それって、自意識過剰じゃない?」


きっと私の顔はそれはもう赤いだろう。だってツナも少しだけど赤くなっているから。しかもなんだか嬉しそうだし。
えぇい!!違う、これは夕焼けのせいなんだ!!!!
「…変かどうかなんて、自分で分かる訳、ないでしょ!!!」
夕焼けのせい、なはずなのに、どうしてか恥ずかしいという思いは止まらなくて、机の下で手をもじもじさせた。見られたらさらに恥ずかしくてもうどうしようもなくなるからこっそり、だ。


「今日…隣のクラスの男の子から……その、告白、というものを、ですね。された訳…なんですけど…」
「えぇっ!?き、聞いてないよ!!!!!」
「だって今言ったもん。」
予想通りの慌てっぷりが嬉しかった。
だってこれってそれだけ愛されてれるってことだよね?
「勿論断ったけど。その時にね、なんか違うなあって思ったの。ツナに告白された時と、違うって。だからどういうことかなぁっと思っ……」
そこまで行って、言葉が消えてなくなってしまった。
かわりに柔らかい感触と、暖かい温もりが身体中を満たしていく。
抱きしめられた私の顔は、丁度ツナの胸元にあって、トクントクンと聞こえてきてそれはなんだかいつもより速度が速い気がした。



「…今、どんな感じ?」



耳元で聞こえるその声に、身体が溶けてしまうんじゃないかという錯覚に陥る。

これってまさしく―――





「……変。」


彼のと比べ物にならない位私の鼓動も早くて、ついでに体温も更に上昇している。
私の返事を聞いた彼はそのまま顔を近づけて、ふわりと唇に柔らかいモノを押しつけた。




「……俺も、」


先ほどよりも赤くなった顔で、恥ずかしそうに笑っている彼をひどく愛おしいと思った。












焼け イダンス












「どうしたの、今日はやけに積極的だけど……」
「………」
「…もしかして、嫉妬?」
「なっ!?」

























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甘甘を目指してみました。
どこか大人の雰囲気を感じた気がするので高校生という設定で。

…恋と変を書き間違えるのは私だけじゃないはずだ。


ここまで読んで下さりありがとうございました。

2010.9.10